昆虫のゲノム科学

昆虫のゲノム進化学と新規モデル昆虫の開発

 次世代シーケンシング (NGS) に代表されるゲノム科学技術、CRISPR/Cas9 ゲノム編集等の遺伝子改変技術、超解像度顕微鏡等のイメージング技術 — ここ数年の生物機能の解析手法のめざましい技術革新により、これまで困難であった非モデル生物の分子・遺伝子・細胞レベルの研究が可能に なってきた。地球上で最も多様性に富む生物群とも言われる昆虫の研究分野もこれら技術革新の恩恵を大いに享受し、新しい昆虫科学が始まりつつある。NGS で得られた情報をもとにそれぞれの昆虫特有の興味深い形態や生理などの進化を遺伝子・ゲノムレベルで明らかにし、さらにゲノム編集で機 能解析を行う、このような新規モデル昆虫研究パイプラインの構築を目指している。例えば、私たちは、社会性進化研究のモデルとしてシロアリや社会性アブラムシを、発光生物学のモデルとしてホタル、武器形質の進化のモデルとしてカブトムシのゲノムを研究している。

 私たちは、ヘイケボタルのゲノムを解読した。ホタルの発光については、ルシフェラーゼ酵素がルシフェリンを基質として、 酸素と ATP を使って光を発生することがすでに明らかにされているが、ゲノム解析により、ルシフェラーゼ遺伝子の起源は、光らない生物でも普遍的に持っているアシル CoA 合成酵素と呼ばれる脂肪酸代謝酵素の遺伝子であること、この遺伝子が何度も重複を繰り返しそのひとつが発光活性を持つルシフェラーゼに進化したことが明らかになった。この研究は、中部大学・大場教授らとの共同研究である。

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重信 秀治
教授

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関連項目